ファンが最も胸を痛めたのが、2021年秋から始まった約3年間に及ぶ戦線離脱でした。高橋遥人が直面した怪我の理由と手術の経緯は、プロ野球史上でも類を見ないほど苛烈なものでした。
発端は2022年4月に踏み切ったトミー・ジョン手術(左肘内側側副靭帯再建術)でした。復帰まで通常1年半から2年を要する大手術を乗り越えようとした矢先、今度は左肩の腱板や関節唇の炎症、さらには神経障害が彼を襲います。2023年6月には左肩の鏡視下手術および左尺骨神経移行術という、投手生命を揺るがしかねない複合的手術を余儀なくされました。
スポーツ医学の専門家やバイオメカニクス研究者は、高橋遥人の故障要因について次のように指摘しています。「彼の最大の武器であった『球持ちの良さ』と『驚異的な腕のしなり』は、リリース直前までボールが打者から見えないという比類なき利点を持つ反面、肘の内側側副靭帯と肩後方関節包に常人の数倍の剪断(せんだん)ストレスを集中させていた」。天賦の才がもたらす爆発的な出力に、関節組織の強度が耐えきれなくなっていた構造的リスクが存在していたのです。