目の前に運ばれてきた看板メニューのナポレオンパイは、ナイフを入れる前から香ばしい焼き色が官能的な光沢を放っている。フォークを沈めると、サクッという乾いた心地よい破裂音。幾重にも折り重なったパイ生地の間から、濃厚でありながら後味に一切のしつこさを残さない特製カスタードクリームと、みずみずしい大粒のイチゴが溢れ出す。コクと酸味のバランスが極めて緻密に計算されている。
さらに見逃せないのが、生地のもっちりとした弾力と果実のジューシーさが絶妙に絡み合うナポレオンクレープだ。薄く均一に焼き上げられたクレープ生地が幾重の層を形成し、口の中でほどける瞬間のミルキーな余韻は、パイとはまた異なる贅沢な快楽を運んでくれる。シーズンごとに表情を変える限定フルーツメニューも、果汁の糖度に合わせてクリームの配合を微調整しているという徹底ぶりだ。