経営破綻の危機すら囁かれていたテーマパークを、劇的なV字回復へと導いた立役者が森岡毅氏だ。当時、合同会社ユー・エス・ジェイのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)として辣腕を振るった同氏の手法は、直感に頼る従来型のプロモーションとは一線を画していた。
その根幹を成すのが、消費者の購買行動を確率で捉える数理マーケティングである。なかでも中核を担う理論が「負の二項分布(NBDモデル)」だ。個々の消費者がいつ、何を買うかを個別に予測することは不可能に近い。しかし、集団としての購入頻度や確率分布は驚くほど規則的なカーブを描く。森岡氏はこのモデルを徹底的に応用し、限られた予算で最大の集客確率(Preference:プレファレンス)を叩き出す施策を次々と打ち出した。
『確率思考の戦略論 USJを劇的に変えた』という鮮烈な実績は、単なるテーマパークの復活劇ではない。勝率を科学的にコントロールできるという事実を、日本の産業界に突きつけた歴史的転換点だった。