物語の序盤から最大の謎として伏せられていた両面宿儺の出自は、人外魔境新宿決戦の最中、宿儺自身の回想と羂索(けんじゃく)が張り巡らせた千年の因縁によって白日の下に晒されました。宿儺は決して最初から異形として生まれた超越者ではなく、「飢餓の時代に母の胎内で餓死しないため、双子の片割れを喰らった」という悲壮かつ壮絶な過去を持つ人間でした。
平安時代において双子は不吉の象徴とされ、忌み子として蔑まれる過酷な環境で育った宿儺は、生まれながらにして四つの腕と二つの顔を持つ特異な肉体を獲得します。そして、彼に喰われた双子の魂は輪廻の輪を巡り、千年の時を経て羂索の手によって虎杖仁(いたどり・じん=虎杖悠仁の父)として転生を果たしました。つまり、宿儺と虎杖悠仁は生物学的に「伯父と甥」という極めて濃密な血縁関係で結ばれていたのです。
羂索が虎杖悠仁という「宿儺の器」を創り出すにあたり、宿儺の魂の片割れである仁を父親に選んだのは、強靭な肉体と宿儺に対する絶対的な耐性を宿すための必然的な設計でした。己の快・不快のみで生きる絶対的個の象徴である宿儺が、意図せざる形で「家族」という鎖で主人公と繋がれていた事実は、本作における最大の因縁構造といえます。