日本の家庭料理に深く根差す思想を提示し続ける料理研究家の土井善晴氏は、切り方ひとつにも「素材への敬意」と「無理のない合理性」を説く。完璧な直線や均一さだけが正解ではなく、素材の形に寄り添う大らかな包丁使いこそが、家庭の温かみのある味を生み出すという考え方だ。
土井氏が提唱する自然体の調理法は、プロの厳密な技術とは一味違う説得力を持つ。じゃがいもの形がいびつであれば、その個性を活かした切り方をすればいい。煮崩れることすらも「美味しさの旨味」として料理全体に溶け込ませるという柔軟な視点は、忙しい現代人の料理に対するプレッシャーを和らげてくれる。