STAP細胞事件は、日本のメディアにおける科学報道のあり方にも大きな課題を突きつけた。連日連夜、自宅前や路上で繰り広げられた過激な張り込み取材は、報道倫理を巡る議論を巻き起こした。その中でも特に大きな注目と議論を呼んだのが、NHKスペシャルが放映した一連の追跡取材番組である。
調査報道・科学ドキュメンタリーとして企画された番組群は、論文疑惑の構造や研究不正の裏側を解き明かそうと試みた。しかし、その演出手法や取材アプローチに対しては、放送倫理・番組向上機構(BPO)から人権侵害を認められるなど、取材者側の客観性や倫理観も厳しく問われる結果となった。科学の真実を追究する姿勢と、一個人のプライバシーや人権を守る配慮との間で、メディアが抱える構造的な問題が白日のもとに晒されたと言える。