蒙驁の業績の中で最も賞賛されるべきは、副将として従えた王翦と桓騎というふたりの天才を見出し、手元に置いた眼力だ。王翦は「自らが王になりたいという野望を持つ」と噂され、他の将軍たちからは危険視されていた。一方の桓騎は元野盗の首領であり、残忍な手口と常識破りの戦術で秦国の主流派からは嫌悪されていた存在だ。普通の上司であれば、扱いづらい彼らを排除するか、強引に自分の枠にはめ込もうとしたはずだ。
しかし蒙驁は違った。彼らの危険性や歪みを含めてすべてを受け入れ、戦場での采配を全面的に信頼して任せたのだ。自分にない突出した才能を持つ部下を恐れず、適切な「場」を与えて成果を出させる。これぞまさに最高峰の他力活用であり、ダイバーシティマネジメントの究極系と言える。自分の無力さを知っているからこそ、他者の強みを最大限に活かせる——蒙驁の器の大きさが、秦国最強の陣営を作り上げたのだった。