視界が数メートル先すら遮られる鬱蒼とした根曲がり竹の藪。その中に潜む捕食者を追いつめる任務は、まさに死と隣り合わせの極限状態だった。地元行政の要請を受け、現場へ投入された大日本猟友会鹿角支部のハンターたちは、いつ背後から飛びかかられるかわからない恐怖と戦いながら捜索を続けた。
6月10日、4人目の遺体発見現場近くで、ハンターたちは体長約1.3メートル、体重約80キロのメスのツキノワグマを射殺した。その後の解剖で、胃の中から人体の一部が発見され、この個体が直接的な加害グマであることが科学的に証明された。しかし、研究者たちの調査によって、現場周辺には複数のクマの痕跡が残されていたことが浮き彫りになり、一頭の駆除だけで安全が担保されたわけではないという不気味な現実が突きつけられた。
この事件は、従来の保護一辺倒だった鳥獣保護行政に強烈な反省を促した。環境省や研究者たちは、個体数管理とゾーニングを主軸とする野生動物管理学(Wildlife Management)の本格的な導入を迫られることとなった。クマと人間の生活圏を物理的・心理的に分断するバッファゾーンの整備や、人里や利用頻度の高い山林に執着する危険個体を迅速に特定・排除するプロトコルの策定が、急務として進められる契機となったのである。