シンガーソングライターである二人にとって、激動の恋愛模様は最も純粋で痛切な音楽的インスピレーションの源でもありました。歌詞の端々に散りばめられた暗号のようなフレーズは、ファンや批評家の間で綿密に分析され続けています。
その筆頭が、セレーナが2019年10月にリリースし、ビルボードHot 100で自身初の1位を獲得したバラード『Lose You to Love Me(自分を愛するためにあなたを失う必要があった)』です。曲中で彼女は、次のように歌い上げています。
「あなたは2ヶ月で私たちの代わりを見つけた。まるで簡単なことのように。私にそう値すると思わせたの」
この「2ヶ月」という期間は、2018年春にセレーナとジャスティンが完全に別れてから、ジャスティンがヘイリー・ボールドウィン(現ビーバー)と復縁し婚約を発表するまでのタイムラグと完全に一致します。痛烈な告白でありながら、曲のクライマックスは復讐ではなく「And now the chapter is closed and done(そして今、その章は閉じて終わった)」という静かな訣別で締めくくられています。
対するジャスティン側も、2015年の世界的メガヒットアルバム『Purpose』に収録された『Sorry』や『Mark My Words』、そしてエド・シーランと共作した『Love Yourself』において、セレーナとの関係からインスパイアされた心情を色濃く反映させています。当時のエレン・デジェネレス・ショーに出演した際、ジャスティンは司会者からの質問に対して「アルバムのうち3曲ほどは彼女について歌ったものだ」と明言しました。過ちへの悔恨、自己弁護、そして届かなかった祈りが、彼の繊細なハスキーボイスを通じて克明に記録されていたのです。