彼の文学的キャリアにおける最大の転機は、日本文学振興会が主催する第107回直木三十五賞の受賞であった。受賞作『乳房』は、過酷な肉親の死や個人的な葛藤を圧倒的な叙情美で昇華させた自伝的小説であり、当時の選考委員たちを唸らせた。
その後も、声が出せない主人公の青年と島の子どもたちの交流を心温まるタッチで描いた『機関車先生』など、名作を次々と世に送り出す。自らの傷口を開くような切実な自伝的小説から、哀愁と救いに満ちた物語まで、彼のペンは一貫して「傷を負った人間がどう生き直すか」という問いを追い求め続けた。