日本国内でしばしば耳にする「学生時代に50メートルを5秒台で走った」という体験談。しかし、日本陸上競技連盟が採用する公認の電気計時(写真判定システム)と、学校体育で使われる手動ストップウォッチ計測には、決定的な精度の差が存在する。
人間の目と指に頼る手動計測では、スターターの煙を見てからボタンを押すまでの反応遅延や目視誤差により、平均して0秒2〜0秒4程度タイムが速く計測されてしまう。日本の実業団や学生トップ選手であっても、電気計時で50メートルを駆け抜ければ5秒後半から6秒フラット前後が国内最高峰の水準だ。手動計測が生む錯覚と、公式計時が弾き出す厳格な数字。その落差を知ることで、世界記録の途方もない凄みが浮き彫りになる。