本作におけるキャスティングの真相を探ると、細田守監督の一貫した美学に行き着く。いわゆる典型的なアニメ声による誇張された芝居を避け、マイクの前で役者同士が呼吸を合わせる「生の会話」を徹底して求めた点だ。
プレスコ(事前の声の収録)に近い手法や、役者同士が同じ空間で掛け合う収録スタイルが採用され、上白石萌歌の無垢なトーンに星野源や黒木華が自然体で応じる構図が作られた。声優専業ではないキャスト陣の起用は、時にアニメファンから賛否を呼ぶこともある。しかし『未来のミライ』においては、日常の些細なすれ違いや家族の距離感を表現するために、彼らの持つ生々しい声のテクスチャーが不可欠だったのだ。