「味の時計台」に対する「まずい」という極端な口コミの背景を精査すると、単に味覚の問題にとどまらない、ブランドイメージとユーザー体験のミスマッチが浮き彫りになります。報道各社の過去データや外食アナリストの指摘を総合すると、理由は大きく3つに集約されます。
第1の要因は、観光名所「札幌市時計台」に起因する過度な期待値のインフレです。観光客の中には「歴史的建造物の札幌市時計台が公認・直営している特別なラーメン店」と誤認して暖簾をくぐるケースが後を絶ちません。しかし、味の時計台の基本設計は、札幌市民が日常的に親しんできた「大衆的で素朴な味噌ラーメン」です。観光地特有のプレミアム感を期待して来店した層が、「ごく普通のチェーン店の味ではないか」と拍子抜けし、厳しいレビューを投稿する心理的バイアスが長年蓄積されてきました。
第2の要因は、平成後期に進めた急激なフランチャイズ(FC)拡大に伴う店舗間の品質格差です。直営店とFC店の間でスープの煮込み具合や野菜の炒め技術、ラードの温度管理にばらつきが生じ、一部のロードサイド店で「スープが薄い」「野菜が水っぽい」といった下ブレが発生しました。これがネット黎明期の掲示板やレビューサイトで拡散され、ブランド全体のパブリックイメージとして定着してしまった経緯があります。
第3の要因は、札幌ラーメンを取り巻く味覚トレンドの急激な変化です。2000年代以降、全国的に「すみれ」や「純連」に代表される超濃厚ラード&生姜のパンチの効いたスタイルや、海老出汁をはじめとする濃厚魚介豚骨が台頭しました。これらに舌が慣れた現代のラーメンフリークから見ると、豚骨と野菜の優しい甘みを前面に出したクラシックな味の時計台の味噌スープは、「パンチが足りない」「フードコートの味」と過小評価されやすい構造にあります。