実際に医療現場を訪れる患者たちの証言やカルテの経過を追うと、梨状筋症候群に至る背景には現代人特有の生活習慣が色濃く影を落としています。
「腰のMRIでは全く問題がないと言われ、心因性や加齢のせいにされていたが、座るだけで右のお尻から足先にかけて火がついたような激痛が走っていた」
取材に応じた40代のITエンジニア男性は、発症時の苦悩をそう振り返ります。1日10時間以上のデスクワークを続け、背中を丸めて座る姿勢が定着していた彼は、整形外科を3軒回った末に理学療法士による徒手検査を受けました。そこでフライバーグテストおよびFAIRテストで明確な陽性反応を示し、梨状筋のトリガーポイントと坐骨神経の滑走障害が特定されたのです。
現場の理学療法士は「長時間の座位によって臀筋群が持続的な虚血状態に陥り、筋膜の癒着が起きているケースが急増している」と指摘します。さらに、片側の後ろポケットにスマートフォンや厚手の財布を入れたまま着座する習慣があるドライバーや営業職、骨盤の前傾が強いロードバイク愛好家などにも好発します。「骨に異常がないから大丈夫」と放置された痛みが、やがて筋力低下や知覚麻痺といった深刻な神経症状に移行していく実態が浮き彫りになっています。