工藤新一が自他ともに認める「平成・令和のシャーロック・ホームズ」であることは作品の根幹をなす設定ですが、その誕生日である5月4日という日付そのものが、ホームズへの最大限の敬意(オマージュ)として設定されています。
シャーロキアン(熱狂的なホームズファン)にとって、5月4日は特別な意味を持つ日付です。アーサー・コナン・ドイルが1893年に発表した短編『最後の事件』において、シャーロック・ホームズが宿敵ジェームズ・モリアーティ教授とスイスのライヘンバッハの滝で対峙し、激闘の末に滝壺へと転落したのが1891年5月4日と記録されています。
当時、ドイルはこの作品をもってホームズシリーズを完結させる意図を持っており、5月4日は事実上の「名探偵の命日」として読者に衝撃を与えました(のちに読者の猛烈な抗議により『空き家の冒険』で奇跡の生還を果たすことになります)。青山剛昌氏はこのミステリー史における最大の転換点をあえて工藤新一の生誕の日に設定しました。「探偵が一度命を落とし、やがて劇的に復活を遂げる日」という構図は、黒ずくめの組織によって毒薬APTX4869を飲まされ、工藤新一から江戸川コナンへと姿を変えて生き延びた主人公の数奇な運命と見事に重なり合います。