水野という男の狂気が最も端的に表れていたのが、映画中盤に登場する歯科医院での拷問シーンです。対立する村瀬組の組長・村瀬(國村隼)が治療を受けている現場に突如押し入り、拘束した村瀬の口内に歯科用の高速回転ドリルを突っ込むという前代未聞のバイオレンス描写は、観客に強烈な生理的嫌悪感と衝撃を与えました。
この場面で水野が放つセリフ「痛ぇか?痛ぇよなあ」「口開けてろコノヤロー!」といった言い回しは、凄惨な状況とは裏腹にどこか日常的なトーンすら漂わせており、北野映画特有のドライなブラックユーモアが凝縮されています。ただ怒鳴り散らすのではなく、相手の苦痛を完全に観察しながら追い詰めていく演技プランは、椎名桔平の卓越した演技力の賜物です。
また、組の若い衆を怒鳴りつける際のリズミカルな「バカヤロー」「何やってんだコノヤロー」といった罵声のキレ味も抜群で、ビートたけしの独特な台詞回しと見事にシンクロしながら、大友組の凶暴な空気を一手に担っていました。