事件の原点は、昭和の日本芸能界を揺るがした電撃的な結婚と破局にあった。
宝塚歌劇団の雪組トップ娘役として一世を風靡した浜木綿子は、退団後も圧倒的な存在感で舞台演劇の世界を牽引していた。その彼女が心を寄せたのが、歌舞伎界の異端児であり革新者として旋風を巻き起こしていた二代目市川猿翁(当時・三代目市川猿之助)である。伝統芸能の枠を超えたクリエイティビティで脚光を浴びていた猿翁と、気品あふれるトップ女優。二人の結婚は、まさに夢のカップル誕生として祝福された。
1965年には長男である香川照之が誕生。しかし、幸福な家庭生活は長くは続かなかった。猿翁が家庭を去る形で夫婦生活は突如として破綻を迎える。1968年の離婚成立時、照之はわずか1歳台。幼少期にして、彼は父という存在を事実上失うこととなった。