『春暁』の冒頭に由来する「春眠(しゅんみん)」は、日本の俳句文化においても重要な三春(春全般)の季語として定着しています。春の夜の心地よい眠りや、朝になっても覚めない微睡の感覚を象徴する言葉として、多くの俳人に詠み継がれてきました。
日本の古典文学における春の朝の描写といえば、清少納言の『枕草子』冒頭「春はあけぼの」が有名です。清少納言が夜明けの空のグラデーションという視覚的な移ろいに焦点を当てたのに対し、孟浩然の『春暁』は布団の中の体感、鳥の鳴き声という聴覚、そして散る花を思う心象風景を重ねています。
平安時代以降、日本の貴族や知識人は唐詩を教養の柱として親しんでおり、『春暁』の感性は和歌や随筆、近世の俳諧へと形を変えながら、日本人の季節感に深く溶け込んでいきました。