土地総合情報システムや不動産情報ライブラリを利用する際、ネット上で頻繁に囁かれるのがプライバシーや信憑性に関する噂です。その代表例が「自分の売買価格が公開されて近所に特定されるのではないか」という懸念と、「データそのものの出どころはどこなのか」という疑問です。
まず、システムに蓄積されているデータの源泉は、法務局の登記データそのものではありません。その舞台裏には、不動産取引価格アンケートの真相が存在します。
不動産の売買登記が完了すると、数カ月後に国土交通省から買主宛てに「不動産の取引価格等に関するアンケート」という公的な封書が届きます。ここには購入価格や土地の状況、取引の経緯などを記入する欄が設けられています。国はこのアンケートの回答結果を独自に集計し、統計的に不自然な外れ値(極端な親族間売買など)を除外した上でデータベースに反映しているのです。
このアンケートは法的な提出義務や罰則のない任意調査ですが、回収率は全国平均で約50%前後に達します。つまり、画面に表示されている取引事例は「実際に登記されたすべての取引」ではなく、「回答が得られた取引のサンプリング調査」である点に留意しなければなりません。
もう一つの大きな誤解である成約価格から個人情報が特定されるリスクについても、国交省は厳格なマスキング処理を施しています。公開データにおいて、番地や号といった詳細な所在地は意図的に削除され、「〇〇市〇〇町1丁目」といった大まかな区画までしか表示されません。また、売主・買主の氏名や建物の正確な築年(「平成〇年築」「2010年代前半」などの括り)も伏せられています。
ただし、住宅密集地ではなく分譲宅地が数区画しかないような超限定的エリアでは、敷地面積と取引時期から近隣住民が推測できてしまう「事実上の特定」が起こり得ないわけではありません。とはいえ、公権力が個人情報をそのまま漏洩させているわけではなく、公益性とプライバシー保護のバランスを取りながら運用されているのが実情です。