民放キー局やNHKの番組表を精査しても、中森明菜のテレビ出演予定にレギュラー番組やスタジオ生歌唱の文字が並ぶことはありません。各局の大型音楽特番の改編期を迎えるたび、水面下では熱心な出演交渉が重ねられているものの、スタジオ生出演はおろか撮り下ろしインタビューの実現すら極めてハードルが高い状態が続いています。
彼女が地上波で見かけなくなった最大の理由は、過去の激務と過熱報道によって疲弊した体調と病気への配慮、そして何よりも「自分の歌の世界を完全にコントロールしたい」というアーティストとしての矜持にあります。1980年代から1990年代にかけて、分刻みのスケジュールとプライベートを執拗に追う芸能マスコミに晒され続けた彼女は、2010年に重度の帯状疱疹など心身の過労から無期限活動休止を余儀なくされました。
民放関係者の証言によると、現代のテレビ番組制作が求める「過度な演出」「バラエティ的な立ち回り」「即時的なSNSウケ」は、徹底して音響や照明、世界観の細部にこだわる彼女の美学と根本的に相容れません。自らの表現を損なうリスクを冒してまで、かつてのように地上波へ身を投じる動機はすでに存在しないのが実情です。