日本映画産業が誇る最大の巨人、黒澤明が全身全霊を捧げて完成させたのが『七人の侍』だった。莫大な予算の超過、容赦のない撮り直し、悪天候による撮影中断。映画会社の上層部が頭を抱えるなか、黒澤は妥協を一切拒んだ。
豪雨の中での泥まみれの決闘シーンは、単なる活劇を超えた迫力で観客の度肝を抜いた。複数台のカメラを同時に回すマルチカメラ手法や、望遠レンズを駆使した緊迫感あふれる構図は、以後のハリウッド映画や世界中のアクション演出の標準となる。百姓が侍を雇うという斬新なプロットは、人間の尊厳と階級の断絶を生々しく描き出し、今なお色褪せない普遍的な人間ドラマとして君臨している。