セサミストリートのキャラクター同士のダイナミクスにおいて、世界中で最も活発な議論を呼んできたのがバートとアーニーの関係です。几帳面でクリップ収集や鳩の観察を愛するバートと、陽気で悪戯好き、お風呂のアヒル隊長に夢中なアーニー。この対照的な2人は1969年の第1話から同じ寝室のベッドを並べて暮らしています。
2018年、かつて番組の脚本を手掛けたライターが「自身と同性パートナーの関係を投影して執筆していた」と私見を述べたことで、世界的なニュースとして報じられました。しかし、運営元であるセサミワークショップ(Sesame Workshop)は即座に公式声明を発表し、次のように明言しています。
「彼らは親友同士(Best Friends)として創作されました。幼児に向けて『自分と全く異なる気質を持つ人間とも、心を通わせ深い友情を築くことができる』と教えるために存在しています。彼らはパペットであり、性別による性的指向は持ち合わせていません」
この見解は、現代の人間関係において重要な示唆を含んでいます。恋愛関係という単一のラベリングに回収することなく、「性格の不一致を抱えながらも、互いの境界線(バウンダリー)を守り同居を続ける健やかなプラトニックの関係性」を幼児期に提示する価値は極めて高いと評価されています。
一方、2006年のシーズン37から合流したアビー・カダビー(Abby Cadabby)は、番組のジェンダーバランスを根本から刷新しました。それまで中心キャラクターの多くを男性(あるいは男性声)のマペットが占めていた歴史を打ち破り、魔法の失敗を恐れず果敢に行動する自立した女児キャラクターとして設計されました。さらにアビーの背景には、母親の再婚によって義理の父と義理の弟(ルディ)を迎えるという「ステップファミリー(再婚家庭)」の設定が丁寧に組み込まれており、伝統的な核家族モデルにとどまらない現代社会の実像を伝えています。