杉元佐一の物語を語る上で欠かせないのが、アイヌの少女・アシリパとの絆です。ふたりの関係性を「恋愛」という単純な枠組みで捉えることはできません。それは、互いの欠落した魂を補い合う、至高の「相棒(パートナーシップ)」でした。
戦場で「鬼神」と化し、自らの人間性を削り落としていた杉元にとって、アシリパは失われかけた人間性を取り戻させてくれる光でした。アシリパが教えるアイヌの食文化や自然への敬意に触れることで、杉元は少しずつ心の平穏を取り戻していきます。一方で杉元は、「アシリパさんには人を殺させない」「清らかなままでいてほしい」と願い、血塗られた争奪戦の泥沼から彼女を守り抜く防波堤となり続けました。
アシリパ側もまた、杉元を一人の対等な人間として信頼し、その傷ついた心を理解しようと寄り添いました。年齢や民族、性別を超え、互いの命と尊厳を預け合うふたりの結びつきは、バディものの最高峰と称されるにふさわしい深みを持っています。