「サイレントヒルの舞台はセントラリアである」という言説に対し、コナミのオリジナル開発チーム「Team Silent」の主要メンバーであり、シリーズの象徴的デザイナーである伊藤暢達氏は、自身の公式SNSやインタビューを通じて明確に否定の事実を発信しています。
伊藤氏の証言によると、1999年に発売された初代『SILENT HILL』の開発当時、チーム内にセントラリアの存在を知る者はおらず、取材に行った事実もありませんでした。原作ゲームの舞台はあくまで「アメリカ中西部・メイン州などを想定した架空の田舎リゾート地」であり、日常的なアメリカの風景が突如として異界へ変貌するサイコホラーを描くための創作だったのです。
では、なぜセントラリアがサイレントヒルの原型として世界中に定着したのでしょうか。その発端は、2006年に公開されたクリストフ・ガンズ監督による実写映画『サイレントヒル』にあります。
ガンズ監督が映画化にあたってビジュアルコンセプトを構築する際、炭鉱火災に呑まれたセントラリアの歴史と景観に強い感銘を受け、「映画版サイレントヒル」のビジュアルモデル、および設定上のインスピレーション源としてセントラリアを採用しました。映画では「地下の石炭火災によって30年前に壊滅した廃墟」というオリジナルの設定が加えられ、降り注ぐ白い物質も霧ではなく「地下火災の灰」として描かれました。
さらにサイレントヒル映画ロケ地の選定において、危険度の高すぎるセントラリア本体ではなく、カナダのオンタリオ州ブラントフォードやハミルトンといった歴史的工業都市の街並みが実際の撮影現場として使用されました。映画の世界的大ヒットにより、「セントラリア=サイレントヒルの元ネタ」という情報だけが一人歩きし、ゲームファンにも逆輸入される形で定着したというのが歴史の全貌です。