「ゴッホはどこの国の人か?」という問いに対し、フランスと誤認される最大の理由は、彼の代表作のほとんどがフランス滞在期に描かれたためです。しかし、フィンセント・ファン・ゴッホの出身地はオランダ南部の北ブラバント州にあるズンデルト(Zundert)というベルギー国境近くの小さな町です。
1853年3月30日、彼は厳格なプロテスタント(カルヴァン派)の牧師の長男として生を受けました。生家は現在、記念館「フィンセント・ファン・ゴッホ・ハイス(Vincent van GoghHuis)」として整備されており、彼の幼少期の記憶や家族の歴史を伝える貴重な展示が行われています。オランダ特有の曇りがちな空、湿地帯と豊かな自然、そして敬虔な信仰心に包まれた環境こそが、彼の精神的土台を形成しました。
オランダ語での本来の発音は「フィンセント・ファン・ホッホ(またはロッホ)」に近く、喉を鳴らす特有の摩擦音が含まれます。フランス語圏で発音しにくかったこともあり、彼は後年、絵画の署名に苗字ではなくファーストネームの「Vincent」だけを記すようになりました。この署名ひとつをとっても、彼が自らのアイデンティティと格闘していた背景がうかがえます。