日本の中学英語で習うhave toとmustの違いは、「must=have to=〜しなければならない」という画一的なイコール関係で処理されがちでした。しかし、これが長年の誤解を生む最大の元凶です。have toとmustの使い分けの理由を最も端的に言い表すなら、「話者の主観か、外的な客観か」という視点の違いに集約されます。
文法的には助動詞であるmustは、話し手本人の強い意志や「私がそう思うから、絶対にこうすべきだ」という主観的な義務を表します。一方で、一般動詞haveを用いたhave toは、規則やスケジュール、周囲の状況といった外的な要因によって「そうせざるを得ない」という客観的な義務を意味します。
たとえば、医者が患者に対して「お酒をやめなければいけません」とプロの診断として告げるなら「You must stop drinking.」という主観的な強い忠告が合います。一方で、患者が同僚との飲み会を断る際に「医者に止められていて、飲めないんだ」と言うなら、自分以外の外的な制限であるため「I have to stop drinking.」と表現するのが自然です。このhave toの客観性とmustの主観性を意識するだけで、言葉の解像度は格段に跳ね上がります。