名古屋神宮郵便局がその長い歴史に幕を下ろした決定的な理由は、郵政民営化の前哨戦として断行された「郵便事業における地域区分局の抜本的再編」と物流ネットワークのモダナイゼーション(近代化)にあります。
かつての郵便輸送は、国鉄・JRの路線網を活用した「鉄道郵便(郵便車)」が主役でした。東海道本線と中央本線が合流する熱田駅の近隣に拠点を構えていた名古屋神宮郵便局は、鉄道輸送と地域集配を直結させるインターフェースとして、東海地方随一の戦略的価値を有していたのです。深夜帯には大量の郵便袋が駅のホームと局舎の間を往来し、局内では無数の仕分け作業員が郵便番号ごとに書状を高速で振り分ける活気に満ちていました。
しかし、1986年の鉄道郵便廃止を経て、郵便物流の主軸は完全に「大型トラックと高速道路網」へとシフトします。都心部の密集地に位置し、大型トレーラーの出入りや敷地拡張に制約があった旧局舎は、年々増加する小包・宅配便の物流量をさばく上で構造的な限界に直面することになりました。
決定打となったのは、2000年に西春日井郡春日町(現・清須市)に誕生したメガハブ「新名古屋郵便局(現・郵便事業の基幹拠点)」の稼働です。最新鋭の自動区分機を備え、名神高速・名古屋第二環状自動車道などの幹線道路直結という圧倒的な立地優位性を持つ新拠点へ、愛知県下および東海エリアの郵便区分業務が一斉に移管・集約されました。この大規模な統廃合により、区分専門拠点としての名古屋神宮郵便局はその歴史的使命を完全に終え、残された地域窓口・集配機能は熱田郵便局へと統合される形で閉鎖に至ったのが真相です。