ピースが脚光を浴びた2010年代半ば、相方の又吉直樹さんが小説『火花』で芥川賞を受賞したことで、メディアは盛んに「コンビ内格差」を書き立てました。「文化人として巨額の印税を手にした又吉」と「取り残された綾部」という構図です。
しかし、メディア論やタレントマネジメントの観点から分析すると、綾部さんはこの「格差」を類まれなセルフプロデュースによって独自の差別化要因へと昇華させました。
当時のインタビューや特番の密着取材において、綾部さんは「又吉がとんでもないところに行ったからこそ、自分も普通に日本でひな壇に座り続けるのではなく、誰もやっていない勝負をしなければならないと思った」という趣旨の告白を残しています。知性派・文学派の又吉さんに対し、綾部さんは「行動力・ミーハー精神・アメリカンドリーム」という対極のベクトルへ振り切ることで、比較の土俵そのものを変革したのです。
結果として現在、ピースは解散することなく、それぞれが唯一無二の肩書を持つ希有なコンビとして存続しています。日本で執筆やメディア活動を続ける又吉さんと、アメリカを拠点にグローバルなライフスタイルを発信する綾部さん。双方が独立した強いブランドを持つことで、コンビとしての価値もかえって高まるという相乗効果を生み出しています。