等号成立条件はなぜ必要?相加相乗平均で減点される真相と正しい記述法

等号成立条件はなぜ必要?相加相乗平均で減点される真相と正しい記述法

等号成立条件はなぜ必要?相加相乗平均で減点される真相と正しい記述法についての真相をご紹介します。

ネット上の質問掲示板や受験相談で頻繁に見られる誤解に、「相加相乗平均を複数回使って変数を消去すれば、どんな複雑な式でも最小値が出せる」というものがあります。しかし、これこそが入試における最も危険な罠であり、等号成立条件の確認を怠る者が必ずハマる落とし穴です。

典型的な失敗例として知られるのが、次の問題です。
$x > 0, y > 0$ のとき、$(x + y)\left(\frac{1}{x} + \frac{4}{y}\right)$ の最小値を求めるケースを考えます。

誤った思考に陥った受験生は、それぞれの括弧に独立して相加相乗平均を適用してしまいます。
・$x + y \ge 2\sqrt{xy}$(等号成立は $x = y$)
・$\frac{1}{x} + \frac{4}{y} \ge 2\sqrt{\frac{4}{xy}} = \frac{4}{\sqrt{xy}}$(等号成立は $\frac{1}{x} = \frac{4}{y}$、すなわち $y = 4x$)
これらを掛け合わせて「$2\sqrt{xy} \cdot \frac{4}{\sqrt{xy}} = 8$ だから最小値は 8 だ」と結論づけてしまいます。

しかし、この計算は完全に誤り(0点)です。なぜなら、全体の等号が成り立つためには「$x = y$」と「$y = 4x$」が同時に成立しなければなりませんが、両者を満たす正の実数 $x, y$ は存在しないからです。等号が成り立たない以上、この式が 8 という値をとることは絶対にありません。

正しい解法は、式を一度展開して $(x + y)\left(\frac{1}{x} + \frac{4}{y}\right) = 1 + \frac{4x}{y} + \frac{y}{x} + 4 = 5 + \left(\frac{4x}{y} + \frac{y}{x}\right)$ と変形し、変動する1つのペアに対してのみ相加相乗平均を適用することです。この場合、$\frac{4x}{y} + \frac{y}{x} \ge 2\sqrt{4} = 4$ となり、等号成立は $\frac{4x}{y} = \frac{y}{x} \iff y^2 = 4x^2 \iff y = 2x$ のとき。正の実数として無理なく同時に満たせるため、真の最小値は $5 + 4 = 9$ と求まります。

このように、「不等式を適用した箇所の等号がすべて同時に成立するか」をチェックしないと、数学的にあり得ない数値を最小値として答案に書いてしまうことになります。等号成立条件の確認は、採点官へのアピールである以前に、自分自身の解答が間違っていないかを検証する最大のセーフティネットなのです。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。