インターネット上の掲示板やSNSでは、ゴキブリの歴史に関して多くの都市伝説や誇大情報が拡散されています。その最たるものが「古代の石炭紀には、体長1メートルを超える巨大ゴキブリが空を飛んでいた」という言説です。
古生物学的事実として、石炭紀の酸素濃度上昇に伴い、節足動物の巨大化現象が起きたことは確かです。翼開長70センチメートルに及ぶ巨大トンボ「メガネウラ」や、体長2メートルを超える多足類「アースロプレウラ」の化石がその証拠です。しかし、同時期に生息していたゴキブリの祖先種(アプチノブラッタなど)の化石を検証すると、その体長は数センチメートルから最大でも10センチメートル前後にとどまっていました。
ゴキブリが巨大化しなかった事実こそが、彼らを生き残らせた最大の戦略的選択でした。体を巨大化させた生物種は、酸素濃度が低下し乾燥化したペルム紀末や三畳紀の環境変化に耐え切れず絶滅の憂き目に遭いましたが、小型の平らな体型を維持し続けたゴキブリは、狭い隙間に潜り込み、少量の資源で生命を繋ぐことができたのです。