事件が起きたのは盛夏の午前。母親の実家に帰省していた当時2歳の男児は、祖父や兄とともに海へ向かって歩き始めました。しかし、家を出てわずか100メートルほどの地点で男児が「引き返す」と言い出したため、祖父は男児が家路につく姿を背後から見届け、民家まで約20メートルの距離で見送りました。このわずか数分、数十秒の空白が、日本中を揺るがす大捜索の引き金となったのです。
報道各社の取材データおよび当時の警察発表によると、祖父が海から戻った際、男児は家の中にいませんでした。家路の途中に分岐点はほぼなく、常識的に考えれば数メートル歩けば玄関にたどり着く平坦な道です。家族は直ちに周囲を捜索したものの姿はなく、同日午後に警察へ通報。ここから、3日間に及ぶ孤独なサバイバルと捜索劇が幕を開けました。
幼児の視野は大人の半分程度、およそ水平90度、垂直70度ほどしかありません(チャイルドビジョン)。大人が「まっすぐ家に帰るだろう」と見立てた視界と、何かに興味を引かれて脇道に足を踏み入れた2歳児の視界には、決定的なズレが存在していました。現場付近の丁字路で、男児は自宅とは逆方向、鬱蒼と生い茂る山林へと続く急勾配の小道へ足を踏み入れてしまったのです。