かつて極道の世界で愛好されたブランドは、イタリアのラグジュアリーメゾンからフランスの個性派ブランドまで多岐にわたります。その筆頭がGianni Versace(ジャンニ・ヴェルサーチ)です。メドゥーサのゴールドバックルやバロック調の大胆なプリントは、力と富の象徴として圧倒的な支持を集めました。仕立ての良いダブルスーツにシルクの柄シャツを合わせ、胸元を大きく開ける着こなしは、組織幹部のステータスシンボルとして定着した歴史があります。
一方で、日常着や準幹部層・取り巻き層の間で親しまれたのが、ポップな色使いと特徴的なキャラクター刺繍を持つカステルバジャックや、犬のアイコンで知られるGALFY(ガルフィー)、あるいはベルベット調のセットアップジャージでした。
2000年代中盤に入ると、雑誌『SOUL JAPAN』などのメディアを通じて、これらの要素が「オラオラ系(悪羅悪羅)」と呼ばれる独自の若者ストリートファッションへと分岐・定着します。黒地に金色のトライバル柄やスカル、ラインストーンを配したジャージは、本職の構成員そのものというよりも、郊外のヤンキーカルチャーや夜の街で活動するスカウト・客引き層の記号として急速に大衆消費されていきました。