化け鯉を理解する上で欠かせないのが、中国の古代神話に記された「登竜門」の故事です。黄河の上流にある激流「竜門」を登り切った魚は龍になるという伝説があり、無数の魚の中で唯一、荒波を遡り切ったのが鯉でした。この「鯉の滝登り」から完全な龍へと脱皮する過渡期の姿を描いたものが、刺青の世界で「化け鯉」あるいは「龍魚」と呼ばれる意匠です。
和彫りにおける鯉から龍への変化の意味は、まさに「発展途上の強さ」にあります。すでに天を翔ける完成された龍ではなく、泥臭く激流に立ち向かい、角を生やし、髭を蓄え、まさに龍へと覚醒する瞬間を切り取ることで、未完成であるがゆえの爆発的なエネルギーと成長への意志を表現しています。