なぜこれほどまでに世界中の人々がこの茶碗に惹きつけられるのか。その理由は、あまりにも奇跡的な成立過程にある。12〜13世紀の中国・福建省に位置する建窯で作られたとされるが、当時の技術をもってしても意図的に作り出すことは不可能だったとされる。
窯内部の急激な温度変化と釉薬の化学反応が奇跡的に重なった瞬間、器の表面に漆黒と青紫の美しいグラデーションが生まれた。光を当てると、斑紋の周りに虹色の光彩(ほたる)が揺らめく。完品として現存する3点はすべて日本国内にのみ存在し、いずれも国宝に指定されている。藤田美術館が所蔵する個体は、他の2点に比べて光彩の透明感が高く、吸い込まれるような奥深さを湛えている点が最大の魅力をなす。