衝突安全の進化が著しい軽自動車であっても、構造上の規格制約ゆえにどうしても克服しきれないアキレス腱が2つ存在します。それが軽自動車高速道路事故の危険性と、軽自動車後部座席の安全性です。
首都高速道路や地方幹線道路の事故現場に出動するレスキュー隊員や、大破した事故車を修復・解体する板金整備工場へのヒアリングでは、次のようなリアルな証言が共通して聞かれます。
「前方の衝突に関しては、エンジンがキャビン下に潜り込む構造やサイドメンバーの潰れ方が実によく計算されており、ドライバーの生存空間がしっかり残っているケースが明らかに増えました。しかし、トラックに時速80km超でリヤからノーブレーキで追突された事案では、後席のシートバックがリヤガラスの直前まで押し潰されている現場を度々目にします」
軽自動車の規格は「全長3,400mm以下、全幅1,480mm以下、全高2,000mm以下」と厳格に定められています。近年の軽スーパーハイトワゴンは、限られた全長の中で「普通車並みの広大な室内空間」を実現するため、後部座席を限界まで後退させられるロングスライドシートを採用しています。その結果、後席ヘッドレストからバックドア(リヤガラス)までの距離がわずか20〜30cm程度しか確保できない状態が生じます。
普通乗用車であればトランク部分がクラッシャブルゾーンとして機能し、後方からの衝撃エネルギーを吸収しますが、後席を最後端までスライドさせた軽自動車にはその物理的な猶予がありません。後部座席にチャイルドシートを装着し、乳幼児を乗せている家庭では、後方からの高エネルギー追突に対して極めて脆弱なポジションに家族を配置しているという冷徹な事実を認識する必要があります。