では、信頼できる文献においてペーター その後の人生はどのように描かれているのでしょうか。原作者ヨハンナ・シュピリが遺したヨハンナ・シュピリ 原作小説、そしてトリッテンの続編小説を読み解くと、アニメ版の最終回以降のペーターの成長物語が鮮明に浮かび上がってきます。
原作第2部において、ペーターは当初、フランクフルトからやってきた車椅子の少女・クララにハイジを奪われたような嫉妬心を抱き、クララの車椅子を崖から突き落として破壊するという過ちを犯します。しかし、おじいさん(アルムおんじ)の慈愛に満ちた導きとハイジの励ましを受け、自らの罪を告白して深く悔い改めます。
この事件を契機に、ペーターの内面は大きく変化しました。頑なに拒絶していた文字の読み書きを習得し、知的な遅れを取り戻します。さらに、クララの足が治った奇跡を目の当たりにしたゼーゼマン氏は、ペーターに対して「生涯にわたって毎日2ラッペンの硬貨を支給する」と約束しました。これは当時の貨幣価値において、日々のパンに困らない確固たる生活保障を意味します。原作小説の結末におけるペーターは、決して貧困のまま見捨てられたわけではなく、経済的恩恵と精神的自立の両方を手に入れているのです。
さらに物語の先を描いた続編小説『それからのハイジ』では、驚くべきロマンスが展開します。美しく知的な女性へと成長したハイジは、ローザンヌの寄宿学校で学びを修めた後、故郷の村デルフリで教師として子どもたちを教える決意を固めます。一方のペーターも、かつての乱暴で怠惰な少年の面影はなく、立派な木工職人(指物師)として村人から信頼される逞しい青年へと成長を遂げていました。
村の復興と教育に情熱を注ぐハイジと、影になり日向になり彼女を支え続けるペーター。互いにかけがえのない存在であることを悟った2人は、やがて結婚の誓いを交わします。アルムの雄大な自然に見守られながら挙げられた婚礼には、クララやおじいさんも駆けつけ、祝福の歓声に包まれます。ペーターが戦死するどころか、ハイジとペーターは夫婦となり、双子の子どもに恵まれるという至福の結末を迎えるのです。