唐代に完成を見た近体詩において、詩聖・杜甫が果たした役割は特異だ。奔放に筆を走らせた李白に対し、杜甫は厳格な格律と徹底的に格闘した。彼の手にかかると、五言絶句の一文字一文字はまるで彫金細工のように狂いなく噛み合っていく。
漢詩の歴史において、五言はもっとも古くから愛された形式でありながら、同時に最も誤魔化しが利かない形式でもある。七言絶句のような華麗な装飾や勢いに頼ることができない分、助詞一つ、動詞一つの選択が詩全体の品格を決定づけてしまう。杜甫の詩が放つ重厚な存在感は、厳しい音律の制約を足かせとするのではなく、自らの思想と時代の苦悩を凝縮するための圧力容器として使いこなした証左である。