大定番作品の陰に隠れがちですが、特筆すべきテーマ性で大人の心を打つ傑作がほかにも存在します。ファンの間で「隠れた名作」として熱烈に語られる作品を検証します。
筆頭に挙げるべきは、2004年公開の『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』です。本作は大山のぶ代をはじめとする声優陣の劇場版最終作であり、制作現場の凄まじい熱量が刻まれています。捨て犬・イチとのび太が交わした「明日、必ず戻ってくる」という約束が、タイムマシンのトラブルによって3億年もの時間のズレを生んでしまう過酷な運命。老境に達したイチ(ハチ)が、何百年もの時を超えてのび太との約束を信じ続ける健気さと、ラストの再会・別れのシークエンスは、ペットを愛する人々のみならず、誠実な人間関係を願うすべての鑑賞者の胸を打ちます。
もう一本、見落とせないのが2016年の『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』です。家出を決意した少年たちが7万年前の日本で原始生活を切り拓く冒険譚ですが、本作の涙の核心は、のび太が遺伝子アンプルから生み出した架空動物「ペガ、グリ、ドラコ」との擬似的な親子関係にあります。冒険の終焉とともに、空想の生物である彼らは現代にも原始時代にも留まることができず、未来の世界の保護施設へと引き取られていきます。雪山での別れにおいて、のび太が「母」として抱きしめ、引き離される瞬間は、責任ある愛情の結末として大人の胸に深く刻まれます。