1994年3月1日、オンタリオ州ロンドンで生まれたジャスティンは、間もなくストラトフォードへと移り住んだ。母であるパティ・マレットは当時わずか18歳。親族の支援を受けながら最低賃金の仕事を掛け持ちし、家賃を払うのも精一杯という貧困生活を余儀なくされていた。食卓に十分な食べ物が並ばない日も珍しくなく、幼いジャスティンにとって、部屋の隅に置かれた中古のドラムセットやキーボードこそが唯一の救いであり、最高の玩具だった。
独学でピアノ、ドラム、ギター、トランペットを次々とマスターしていった少年の耳は、教会で流れるゴスペルや母が好んだR&Bを貪欲に吸収した。正規の音楽教育を受ける資金などあるはずもない。だが、その制約こそが彼の感性を研ぎ澄ませた。貧困という圧倒的な逆境のなかで、彼の歌声には同年代の子供にはない哀愁と力強さが刻み込まれていったのだ。