大型観光バスが押し寄せる日中のピークタイムを外す。それだけで、湖はその表情を一変させる。地元ガイドが口を揃えて勧めるのが、夜明け直後の御鼻部山展望台や発荷峠からの眺望だ。標高差が生み出す雲海がカルデラを満たし、朝日が昇るにつれて霧のヴェールが裂け、群青の湖面が姿を現す瞬間はまさに息をのむ美しさである。
さらに注目を集めているのが、陸路では決して到達できない断崖絶壁を巡る早朝のカヤックツアーだ。エンジンの音すらしない静寂のなか、パドルを漕ぎ進める。透明度抜群の入り江や、荒波に削られた巨岩「御室(おむろ)」の真下へ。団体客が決して立ち入れない限定ルートにこそ、太古の火山活動が刻み込んだ生々しい地球の息吹が眠っている。