「オッドアイの猫は耳が聞こえない」という話を耳にしたことがあるかもしれない。だが、猫の生物学・動物行動学および臨床現場のデータは、その通説に重要な補足を求めている。白猫に見られる青目側の難聴は、内耳の蝸牛にある血管条の色素細胞欠損に起因するものだが、黒猫のオッドアイにおいては状況が大きく異なる。
獣医学・小動物医療の専門医による脳幹聴覚誘発電位(BAER)検査の症例報告によれば、ソリッドブラックのオッドアイ個体は、内耳の発達に必要なメラノサイトが正常に配置されているケースが圧倒的に多く、先天性難聴を併発している割合は白猫と比べて著しく低いことが分かっている。黒い毛色を全身に発現させているという事実自体が、内耳の聴覚神経系が正常に保護されている証拠となるからだ。
視覚機能に関しては、日中の視力に左右差はほとんど生じない。ただし、青い瞳の側はタペタム(網膜背後にある輝板)の反射効率やメラニンシールドの薄さにより、強い日差しに対する羞明(眩しがり)を見せることがある。暗所での行動観察においても、瞳孔の収縮スピードや光の散乱にわずかな違いが認められるが、捕食行動や室内生活に支障をきたすレベルの障害となることは稀である。