政治報道における言葉のトーンは、政権ごとのコミュニケーション戦略やメディアの進化とともに変化を続けている。かつての岸田文雄政権下での長時間の国会論戦や記者会見を振り返っても、発言者の立場によって呼称の使い分けがはっきりと見て取れた。
野党議員が議場で質問台から呼びかける際は「総理!」と声を張り上げる。憲法に基づく国会の場では、正式な官職を指す略称が最もふさわしいからだ。一方で、海外首脳との首脳会談やG7サミットを報じる記事では、国際社会のリーダーの一人として「日本の首相」という表記が前面に出る。
スマートフォンのニュース通知やSNSの短いテキストが主流となった現代でも、この使い分けの根幹は崩れていない。むしろ、限られた文字数で正確なニュアンスを届けるために、現場の記者は文脈に応じて「首相」と「総理」のキーを瞬時に打ち分けている。