「息子の死を無駄にはしない」。事故で最愛の息子を亡くした井上雅彦氏をはじめとする遺族らは、悲しみに打ちひしがれる間もなく署名活動や国会への働きかけを開始した。持病を悪意をもって隠し、事故を引き起こした者に対して厳罰を科せる新たな法枠組みの必要性を、彼らは涙ながらに訴え続けた。
この遺族たちの執念の行動が結実し、新たな特別法である「自動車運転死傷行為処罰法」が制定された。この法律には、てんかんや統合失調症などの特定疾患を隠して運転し事故を起こした場合の処罰規定が明確に盛り込まれた。特定の悲劇から生まれた新法は、日本の交通刑法における歴史的な転換点となったのである。