レシピに「ベーキングパウダー小さじ1(約4g)」と書かれているところを、そのまま同量の重曹で置き換えてしまうと、ほぼ確実に失敗します。お菓子作りでよくあるトラブルの背景には、明確な化学的理由が存在します。
第一の理由はアルカリ成分の過剰残存です。ベーキングパウダーは酸性粉末が同封されているため反応後に中性寄りへ落ち着きますが、単体の重曹は生地の中に酸(レモン汁、ヨーグルト、ハチミツ、ココアなど)が存在しない場合、熱分解後にアルカリ性の強い炭酸ナトリウムとして生地内に残留します。これが舌を刺すような独特のエグみや苦味の正体です。
第二の理由はフラボノイド色素のアルカリ反応による変色です。小麦粉や卵、あるいはナッツや果物に含まれる天然色素は、アルカリ性に傾くことで黄色や緑色、時には灰色がかった濁った色へと化学変化を起こします。「バナナケーキを作ったら断面が黒ずんだ」「プレーンパウンドケーキが黄ばんで薬臭くなった」という現象は、重曹の過剰投与による典型的なトラブルです。