一方で、インターネット上の情報や古い喫茶店文化の影響により、ブラジルコーヒーに対していくつかの根強い誤解が存在することも指摘しなければなりません。
最も典型的な盲点は、「ブラジルコーヒーは苦味が強く、深煎り(フレンチやイタリアン)にして飲むための豆である」という固定観念です。昭和から平成初期にかけて、低品質な欠点豆のオフフレーバーを消すために深く焙煎して苦味で覆い隠していた時代の名残が、いまだに誤った先入観として残っています。
しかし、高品質なサントスNo.2やセラード産の生豆において、ブラジルコーヒーおすすめ焙煎度は「中煎り(シティロースト)から中深煎り(フルシティロースト手前)」です。この焙煎レンジに留めることで、良質なナチュラル精製豆が持つヘーゼルナッツの芳香や、黒糖のような甘やかなコクを最も鮮やかに引き出すことができます。過度に深く焼きすぎると、ブラジル本来の持ち味である繊細な甘みのレイヤーが失われ、単なる焦げの苦味へと変質してしまう点には注意が必要です。
また、「ブラジル=安価なブレンド用の嵩増し(かさまし)豆」という認識も完全な誤謬です。近年のブラジルでは「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」に代表される品評会で90点以上を叩き出すマイクロロットが多数輩出されており、パパイヤや完熟ピーチのようなフルーティーさを備えた高級豆の世界でもトップランナーとして君臨しています。