レイテ沖海戦からフィリピン攻防戦にかけて、旧日本陸海軍は爆弾を装着した航空機ごと敵艦に突入する特攻作戦を本格化した。搭乗員の命を100%消費することを前提としたこの軍事行動の中で、佐々木伍長の行動は極めて異例だった。彼は爆弾を切り離して敵艦へ命中させた後、機体を高度に制御して友軍基地への無事生還を繰り返したのだ。
「命を捨てて死んでこい」という精神論が支配していた大本営や第4航空軍の司令部にとって、生きて帰還する特攻隊員の存在は不都合極まりないものだった。だが、佐々木を指導した岩本益臣大尉が教え込んだのは、「特攻の目的は死ぬことではなく、敵艦を沈めること。爆弾を落として沈められるなら、生きて戻って何度も出撃せよ」という徹頭徹尾リアルな軍事合理的思考だった。彼はその教えを忠実に守り、卓越した操縦技術で敵の激烈な対空砲火を潜り抜けては、正確な爆撃を成功させて生き残った。