長年、日本の人類学においては「縄文人」と大陸からの「渡来人」が混血して現代日本人が形成されたとする「二重構造モデル」が定説とされてきた。だが、2020年代半ばから急ピッチで進んだ古人骨DNAの超高精度ゲノム解析は、このシンプルな物語に終わりを告げた。
最新の研究が解き明かしたのは、東アジア大陸の異なる地域から時期をずらしてやってきた複数の集団の存在だ。弥生時代に渡来した初期の稲作農耕民に加え、古墳時代に急増した東アジア北東部系の渡来民。彼らの遺伝的影響が縄文人の基盤の上に重なり合うことで、現在の日本人のゲノムが形作られたとする「三段階モデル(三分律説)」が今や世界的な主流となりつつある。歴史は、私たちが教科書で読んでいたよりも遥かに複雑で、ダイナミックな人間模様に満ちていた。