『異類婚姻譚』の刊行および受賞当時、SNSや読書レビューサイト(読書メーターやブクログ等)では熱烈な議論が巻き起こりました。その反応は、単なる「感動した」「面白かった」という紋切り型の感想にとどまらない、読者自身の私生活を揺さぶるリアルな声に満ちていました。
肯定的なレビューで特に目立ったのは、「夫婦生活のリアルすぎる違和感を言語化してくれた」という既婚読者からの共感です。「結婚して何年も経つと、自分が夫に似てくるのか、夫が自分に似てくるのか分からなくなる瞬間がある」「ホラーではないのに背筋が凍るような日常のリアルがある」といった感想が多数寄せられました。
一方で、「初期の『腑抜けども〜』のような過激な毒や激しい感情のぶつかり合いを期待していた読者」からは、「上品にまとまりすぎていて物足りない」「もっと痛快な破滅を読みたかった」といった声も見受けられました。しかし、この「乾いた恐怖とブラックユーモア」こそが、初期の情動的な演劇的作風から、静謐な純文学作家へと脱皮した本谷有希子氏の成熟の証拠であったと言えます。