2022年2月、オーストラリア連邦政府は東海岸地域のコアラを「危急(Vulnerable)」から「絶滅危惧(Endangered)」へとランクを引き上げました。この決定に至ったコアラ絶滅危惧種指定理由は、あの森林火災だけが直接の引き金ではありません。火災は、水面下で進行していたコアラ生息数激減の真相を一気に表面化させた触媒に過ぎなかったのです。
最大の脅威は、都市開発や農業用地拡大に伴う「生息地の破片化(Habitat Fragmentation)」です。分断された森林間を移動するコアラは地上を歩かざるを得ず、高速道路での交通事故や飼い犬による咬傷事故が激増しました。さらにストレスから免疫が低下し、不妊や失明を引き起こすクラミジア感染症が個体群全体に急速に蔓延。火災が発生する前から、オーストラリア東海岸のコアラは構造的に追いつめられていたのです。