週末ともなれば県外からの湯治客や観光客で広い無料休憩室が埋め尽くされていた日航亭大湯が、営業を停止したのは2023年春のことでした。当初は設備の不調による一時的な休業と受け止められていましたが、そのまま正式に閉館が告知され、多くのファンが絶句することとなりました。
関係者への取材や周辺事業者の話を総合すると、最大の引き金となったのは主要配管および温熱源泉設備の致命的な損耗です。大湯の源泉は90度を超える超高温かつ高濃度のナトリウム・カルシウム-塩化物温泉であり、配管内のスケール(湯の花・析出物)付着や金属腐食の進行スピードが極めて速い特性を持ちます。これらに加え、昭和中期から引き継がれてきた建屋全体の修繕には億単位の費用が見込まれ、個人・小規模法人規模での設備更新の限界を超えていた背景があります。
さらに、コロナ禍を経た光熱費の急騰や後継者不在の課題が重なりました。かつて日本航空(JAL)の保養所兼旅館として名を馳せ、のちに気軽な日帰り温泉として独立採算を維持してきた同施設ですが、湯量を守り続けるためのランニングコストが収益を圧迫し、惜しまれつつも歴史にピリオドを打つ決断が下されました。